喫茶と読書 ひとつぶ

20220624

今日はものすごい風でしたね。暑くなるという予報は聞いていましたが、風がそんなに吹くなんて。午前中にマルサン堂さんにパンを買いに行った時にはまだ強風という感じではなく、むしろ風があるから外は気持ちがいいなあくらいに思っていました。戻って開店準備をしていたら、やっぱり室内だと暑いと思って窓を閉めてエアコンをかけました。それからしばらくして、キッチンの窓の外で何かがガタガタ音がして、目を上げると、欅の枝がゆさゆさ揺れていました。お客様に伺うと、風がすごくて枝も落ちているとのこと。そして、すごく暑い、ということでした。

そのお客様に、良いものを見せていただきました。それは白井明大という詩人が書いたパンフレットのようなもので、日本国憲法の前文を詩に書き換えたものでした。言葉が子供でもわかるような平易なものを使ってあります。そして、最後のページに日本国憲法の前文がそのまま掲載されていました。平易な文章を読んだ後で本当の前文を読むと、内容がするっと頭に落ちてきました。そして、なんという格調高い、素晴らしい憲法なんだろうと思いました。

確か小学生の高学年の時でした。社会で憲法を習ったんだと思います。古川先生という高齢の先生でした。先生は憲法の全文が載っている本を持っていました。それは青い拍子に椅子と林檎が書いてあり、表紙の青と林檎の赤がとても綺麗な本でした。私はとてもその本が欲しくなって、買ってもらいました。その本は中学生になっても、引っ越して高校生になっても、東京の大学に来た時も結婚した時も、ずっと捨てずに持っていました。ひとつぶにも持ってきたと思ったのですが、今日探したけれどありませんでした。でもきっと家にあると思います。

憲法を学校で教わったときに、基本的人権の尊重、戦争放棄、国民主権というのが三つの柱だと教わりました。小学生だった私は、人権とか国民主義というのはもう生まれた時からあったものだったので、あまりなんとも思わなかったと思うのですが、戦争放棄、ということはすごくいいなと思った覚えがあります。私の親は太平洋戦争が始まった頃に生まれた世代です。終戦直後の苦しい時代のことは、度々聞いていましたし、祖父母は実際に戦争に行ったり、疎開したりした話をしてくれました。銀座に行った時には、日本兵の軍服を着た人が物乞いをしているのも見ました。まだそういう時代だったのです。だから、戦争放棄、というのはすごくいいことだと思いました。世界中の国がそうだったら誰も戦争で死ぬことはないのに、と考えていました。

物事はそんなに単純ではない。でも、実は単純なことなんだと思います。それが実現しない。また今、世界では戦争状態が起きています。私はこの国がこんなに美しい憲法を掲げていることをちょっと忘れかけていました。どんな理由であれ、他国に戦争を仕掛けて、多くの国民の命を失い、敗戦した国として、できることはないんでしょうか。誇りを持って、憲法を掲げて世界に訴えることはできないのでしょうか。そんなことを思いました。思い出させてくださって、ありがとうございます。

それでは今日は帰ります。明日からまた、危険な暑さになるようなので、皆様もお気をつけください。水分と塩分補給を忘れずに。それではおやすみなさい。