喫茶と読書 ひとつぶ

20220212

松浦寿輝の『青天有月』読了しました。すごくよかったです。この本には「エセー」とタイトルに入っていて、「エセー」というのは巻末の松浦さんの後記によると、モンテーニュの著作のタイトルで、自らの判断力の「試し」として書かれた文章、という意味だそうです。「随筆」という気楽なものより、「もっとずっと厳しい言説の営みを指していた」。筆者も言う通り、この本はそこまで厳しい気分はなくて、でも、随筆と呼ぶにはあまりに観念的なのです。

「貧しい光」という章があります。そこではマッチ売りの少女のことが書かれていて、同じくアンデルセンによる「人魚姫」や「赤い靴」「パンを踏んだ娘」という足の機能不全というモチーフをめぐる考察(考察より随想?)が繰り広げられます。よく読んでみれば、その部分は若干脇道にそれたところではあるのですが、そんな迂回路を辿りつつ、宮沢賢治を引き、ゴダールに言及し、中上健次を登場させて詩は貧しさと切り離せない、と導いてゆきます。論旨が通っているのか、それはよくわからないのですが、つむじ風にのせられているように、一気にこちらも読み切ってしまいました。

読み終わってみれば、詩人の鋭い考察であったり、逡巡であったり、願いであったりというものが目まぐるしく表に出てはひっこむ、そんな繰り返しのような文章でした。その光や影が現れたり消えたりするその様を、うっとりと眺めたような読書でした。

このような文章を読んだのは多分久しぶりで、ちょっと頭がぼうっとなってしまいました。調べてみると、この本はもう絶版のようで、古本でしか手に入らないようです。図書館にあってよかった。いつか古本でも良いので、持っていたい、何度も読み返したいと思いました。

さて、そしてお知らせです。

3/16(水)〜21(月)にひとつぶで hashimoto eimi exhibitionを開催します。インスタグラムでお互いにフォローしていたのですが、eimiさんがひとつぶに来てくださり、気に入ってくださって、ご提案をいただきました。私もインスタでeimiさんのお仕事は拝見していて、いいなと思っていましたし、ひとつぶでそのようなことができたらということも考えていました。ひとつぶで展覧会をやるというのは、なかなか難しいことなのです。というのも、画廊と違って、カフェですので、通常のお客さまもいらっしゃるし、店内を見て回るということはお店の性質上するわけにはいかないなということがあります。eimiさんのご提案で、1席という空間に作品を展示する、という形で不可能が可能になったというわけです。私もとても楽しみにしています。

また近くなったらお知らせしますが、その席については会期中はご予約を受け付ける予定です。もちろんご予約のない時間帯にはどなたでも座っていただけます。詳細はまた追ってお知らせしますね。1週間前から1日づつ予約が開始されるようになると思います。

この展覧会とは別に、席の予約についてのシステムを導入しましたので、週末のみ受け付けてみようかなと思っています。その件についても、またお知らせしますね。

さて、それでは今日はこれで帰ります。明日は雨から雪になるようですね。また嫌だなあ。今回は意外とガッツリ積もるんじゃないかと予想。月曜の朝が嫌ですね。それではおやすみなさい。また明日。