喫茶と読書 ひとつぶ

20210927

ティム・インゴルド『ラインズ』とりあえず読了。面白い。「線の文化史」という副題がついていますが、文化史という学問なのか、これは。こういう発想はどこからくるのだろう、と思います。

出発は発話と歌はどこで区別されるようになったのか、というところからだった。そこから記述や刻印という行為、ラインがが描かれる表面との関係、とラインに関する考察は深まっていく。所々に詩のような表現があって、それが楽しい。

びっくりしたのは漢字についての考察。漢字をじっと眺めていると、それがなんという字であるかという事がわからなくなる、というもの。これは中国の話として書いてあったが、日本人でもよくわかる事である。漢字をよくよく眺めていると、いろいろな部分に分解されて、どこかが何かおかしいような感じがしてきて、何が正解なのか、目の前にある文字が正しいのかよくわからなくなってくる、ということは皆さんも経験あるんじゃないだろうか。見れば見るほどぼやけてきて、自分で紙に書いて確認したりする。あまり引用するのは好きではないけれど、すごく感心したので書いてみよう。

「見つめることは、見つめる対象を固定化する特別な観察ーすなわち対象を釘づけにすることである。しかし書かれる漢字はそうした監視による刻印によって形成されるどころか損なわれる。なぜなら中国語では漢字の統一性はそれが書かれる運動にあるからだ。運動を停止させると漢字はばらばらになってしまう。」

素晴らしい考察。

さまざまな「ライン」を、散歩あるいは徒歩旅行的なものと、連結器という二つの概念に分けていく明快さが、少し鮮やかすぎる感じは持ってしまった。明快すぎるものは、どこかに落とし穴があるような気がするものなのだ。まだまだ読み込みが足りないし、何度でも読み返したい。他の著書も読んでみたいです。

さて、明日は定休日です。ひとつぶには来るのですが、時間があまりないのでブログはお休みするかもしれません。水曜日にまたお会いしましょう。スコーンの新しいプレートを出せるように頑張ります!カレーはまた元に戻って、チキンです。一巡しましたね!ありがとうございます。それでは水曜日に。おやすみなさい。