喫茶と読書 ひとつぶ

20200930

うわあ。9月終了しましたね。7、8、9で3ヶ月。早いですね。1年の4分の1が終わりました。本日、そしてこれまでご来店いただいた皆様、ありがとうございました。また、SNSなどで応援いただいている皆様、ありがとうございます。明日から始まる4ヶ月目、またバタバタしながらやっていきますので、どうぞよろしくお願いします。

さて、いろいろと今度書きます、ということを書いているような気がしますが、昨日見た「ふたつのまどか」展のことなど。

何の予習もなく、というか、Twitterは少し検索したのですが、あまり何も出てこなくて見たこの企画展ですが、とてもよかった。久しぶりの美術館だったというところを差し引いても、とても楽しかった。

日本の現代美術については全くの無知です。そういう文脈がなくても、十分楽しめるものでした。まず福田尚代さん、もうこの部屋で撃ち抜かれていました。ジョゼフ・コーネルの「ラ・シャット・エマイヨール」へのオマージュが込められた古い文庫本。そこに貼られた裏返しの切手。雲のようなふわふわでできたパステル色の円。壁一面に書き出された名前。一つ一つの名前が塗りつぶされた電話帳。それぞれが、もう。そして1行だけが浮き出るよう畳まれた本。素晴らしかった。その作業を丁寧に仕上げていくアーティストの手元を思うと、気が遠くなり、敬意が湧いてくる。後でミュージアムショップで知ったのですが、福田尚代さんは、回文の人でもあって、展示されていた詩は、回文になっていた。これも相当に長い詩なので、言葉を集めてくる、大変な作業だったと思うのだ。福田さんのこれからは、ずっと追い続けていきたいと思った。

そしてジョアン・ミロ×野口里佳さん。ミロの部屋を拡大し、解釈している壁面が楽しい。クマンバチの写真、空の色が美しい写真、とても気持ちいい。先ほどの細密な福田さんの部屋では視線は小さいものへ小さいものへと収縮していた。それがここで解放される。

次はさらに世界が大きくなる。渡辺信子×エルズワース・ケリー。布を張っているインスタレーションがとても面白い。枠が切り取られることによって、こんなに丸みが感じられるとはどういうことなのだろう。

4つ目は杉戸洋×ラリー・ベル。こちらもスケールのある展示。玉虫色が好きな私にはとても嬉しい。

最後はさわひらき×サイ・トゥオンブリー。この部屋は全てが愛おしかった。画像も、音も、展示物も。トゥオンブリーの作品も大好きなのだが、いじらしさみたいなものが共通していて、ずっと眺めていられる。このままこのいじらしい世界に浸っていたい。何時間でも。そう思えた。アートとは何なのだろう。世の中にはいじらしいものや愛らしいものは他にもたくさんある。アートはそれと何が違うんだろう。「かわいい」という言葉で語ってはいけないんだろうか。

そして、なぜ私は、西欧的なものに憧れているんだろう。これももう、古い頭なのだろうか、そしていま「西欧的」なものとは実際の生活の中にあるのだろうか。なぜ「ノスタルジア」を感じてしまうのか。私のどこに「西欧的なもの」の記憶が堆積しているのだろう。

そんなことを感じた展覧会でした。素晴らしい5人のアーティスト、そして企画された美術館も素晴らしい。この美術館が同じ県内にある事を嬉しく思います。もし、まだ行ったことのない方がいたら、ぜひ一度訪れる事をお勧めします。庭園も素晴らしいですよ。今は駅からのバスを運行していないみたいで、車じゃないと、ちょっと大変かもしれません。また、コロナ対策で完全予約制となっていますので、ご注意を。私も会期中にもう一度行ってみようと思っています。

それではまた明日もよろしくお願いします。おやすみなさい!あ、今日のアイキャッチ画像は、賄いのキーマカレーです。来年の夏は、トウモロコシのキーマやりたいなあ。美味しかったです。そしてついに、「われら」読み終わりそうです。それでは!