喫茶と読書 ひとつぶ

20200822

静かな1日でした。もちろんひとつぶはいつも静かですが。夕方、稲光と雷鳴があり、あっという間に雨が降ってきました。一時は土砂降りだったのでは。駅前ロータリーにはお迎えの車がたくさん来ていました。どのあたりからの車かわかりませんが、すごく素早いと思いました。

お客様からいただいた、カズオ・イシグロの『日の名残り』を読み終えました。英国の誇り、名誉、執事としての職業意識、品格。イギリスらしい、いかにもイギリスらしい価値観、少し変なユーモアのセンス、田舎の風景。そうした中で、巧みに時間が行ったり来たりして、全容が明らかになっていきます。

自分の生涯を捧げた職業の中での倫理観が揺るぎ、もしかしたら変わるかもしれなかった、自分の人生の岐路を振り返る。それでも彼に後悔はないと思います。自分なりの考えで生きてきた事に、何ら恥じることはないでしょう。後悔はしない、けれど思いを巡らすときはある。抑制した表情の下に、思いが隠れているのだと思います。

郷愁に彩られた、ロマンチックな描写で、一人の職業人の生き様を浮かび上がらせる見事な作品ではないかと思います。訳も格調高く、素晴らしいと思いました。

この作品の中で、政治についての記述で、議会での採決で決定がされるのではなく、実はその前にいろいろな会合や会議で物事は決まって行く、というようなことがありました。これが、昔からとても疑問だった。日本の国会もそうですよね。委員会とかで全て決まっていて、採決は形式だけ。これはイギリス式なのでしょうか。他の国もそうなのだろうか?不思議な制度だなと思っています。

明日は少し涼しくなりそうですね。お出かけお散歩の途中で、ひとつぶでしばしくつろぐのはいかがでしょうか?お待ちしております。