ひとつぶの席 1
ひとつぶには10個の席があります。それぞれをご紹介したいと思います。
まずは入り口から入ってすぐ右のこの席。
貫禄のあるチェスターフィールド型のソファです。残念なことに本物ではありません。しかしながら、どっしりと体を包み込んでくれてたいへん座り心地がよく、本を読むのにとてもよい椅子です。こちらの椅子があるゾーンは元のフローリングを活かしていて、床の色が暗めです。それもあって、どっしりと落ち着いたクラシックな雰囲気となっています。
古風なスタイルのこの椅子に合わせて、照明はスタンドです。笠のすぐ下の乳白色の部分を回すと点灯します。テーブルはアメリカのミッドセンチュリーで、LANE社のものですが、なぜか塗装があっという間に剥がれてしまい、簡単にですが再塗装をしています。三角のテーブルは位置がなかなか決めづらいのですが、ちょうどいいところに落ち着きました。
この席の周囲には詩歌、近代文学のものが多く配置してあります。萩原朔太郎全集(全部は揃っていませんが)、そして1980年代後半の現代詩の詩集が一段。その下の段は歌集とシュルレアリスムやロシア文学の本が少し。古本屋さんの文学の棚の雰囲気です。
自分語りしてしまいますが、この棚の本は、自分の一番深いところにあって、しばらく蓋をしていました。ひとつぶをオープンするに当たって、本を並べながら、これらの本を読んでいた頃の感性をいま自分が持ち得ているのか、または新しい発見をできる力を持っているのか、というようなことを思っていました。時代を超えて、読み応えのある本たちだと思いますので、ご興味があればぜひ手にとってみてください。
先日もご案内したように左側の壁には若林奮さんの版画。朔太郎の全集とトーンが合っていてとてもいいと感じています。
座った時の風景はこんな感じ。目の前に思潮社の現代詩文庫と漱石、百閒両先生、サンリオの文庫などが並びます。壁の向こうは少しモダンなひとつぶ。
人の出入りの少ない当店では、入り口に近いといえども、静かな一角です。座り心地も良いので、2時間くらいで文庫本を1冊ばっちり読んじゃう、という時にいいかなと思います。ワインを飲みながらミステリーとか、絵になりすぎますね。背後の文庫本はそんな感じで、ミステリーや歴史物、軽めのエッセイなどを並べています。