喫茶と読書 ひとつぶ

20240419

タルト、無事にできました!結局甘夏のタルトにしました。これだと甘すぎず、甘夏のほろ苦さがアーモンドクリームといいハーモニーを奏でます。タルト台もレシピを変えて、おいしくなりました。やったー!という感じです。ただ、食べづらい。今日はナイフをつけてご提供しましたが、もう一工夫。営業しながらこんな感じですみません!もう少しブラッシュアップします。

そうなんです。本来はこういうことが全てクリアになって、木曜日からのご提供、となるのが本来。同業の方がこれを見ておられたら、あらあら、と思われちゃいますね。すみません!

さて、今日はすごい風でしたね。ひとつぶは凪いでましたが・・・。久しぶりにこんな売り上げ!という数字でした。風のせいなのか、不徳の致すところなのかは分かりませんが、とりあえず風の様子を見て、ちょっと予想はしていました。

そして今日は読むこと読むこと!途中で疲れるくらい読みました。月曜日くらいから読んでいた、『見ることの塩』。四方田犬彦さんの本です。昨日上巻を読み終わり、今日一気に下巻を読みました。ページを捲る手を止められない、そんな本でした。これは2005年に出版されたものが先日河出文庫になったのですが、上巻が「イスラエル/パレスチナ紀行」、下巻が「セルビア/コソヴォ紀行」なのです。このタイミングだからあえての文庫化だったのかもしれません。それぞれに書き下ろしの増補もあって、今のガザのこと、ウクライナのことにも触れられています。

四方田犬彦さんは、映画の批評家というイメージです。今文庫本の肩書を読むと、エッセイスト、批評家、詩人、となっています。そして漫画を中心に、とありますね。この本の中では映画について触れられていることがとても多かったです。そして何より、街をものすごく歩くのですが、その描写が的確ですごく伝わるのです。建物が崩壊している様子、子供が近寄ってくる時の表情、視覚的なのです。もちろん私はイスラエルにもセルビアにも行ったことはないけれど、なんとなく一緒に歩いているようなそんな気持ちになりました。

また、それぞれの国についての記述ももちろんあって、イスラエルの方は最近少し色々読んでいたおかげで知っていたのですが、ユーゴスラビアの方はあまり知識がなくて、今回すごくクリアになりました。どちらの国の争いでも、一番嫌なのは拷問とか強姦というようなことが起きていることです。同じ人間同士なのに、なぜ、と思ってしまいます。

「民族」や「宗教」が旗印になって争いが起きているのですが、四方田さんが下巻の増補で書かれていますが、それは争いを起こしたい者がそのような大きな物語を描き出しているのです。「どうしてこんなことになったのか、わからない」。当事者であるにもかかわらず、人々はそんなふうに民族浄化や争いのことを語ります。少し前の時代までは、こんな分断はなかった、と。日本の太平洋戦争もそうだったのかもしれない。気がついたらもう反対することもできなくなっていた。そして恐ろしいことに、もしかしたら、今もそういう道を歩まされているのかもしれないのです。

歴史から学ぶことを私たちは忘れてはいけないし、常に本当は何が起きているのかをしっかり見ていないといけない。そして何が大切なのかを心に留めておかなければいけないと思います。(『見ることの塩』四方田犬彦・河出文庫・2024)

さて、それでは帰ります。良い本を読めて幸せ。明日もよろしくお願いします。おやすみなさい。