喫茶と読書 ひとつぶ

20210715

開店した途端、ゴロゴロ雷。これはこれは。それでも結局雷がなるばかりで、雨はあまり降らなかった模様です。千葉の方はすごかったと聞きました。そして明日からは夏になるらしい。暑いの怖い。

やっぱり何が嫌って、暑さと湿度で、いろいろ心配です。去年はそれがプレッシャーで押し潰されそうになりました。何もかもを冷蔵庫にしまって、それでも心配で。あの夏が来る、と思うと嫌な気持ちしかありません。去年はワンプレートもあったから、そのせいもありましたね。

さて、雷のなる中、私は多和田葉子さんの『穴あきエフの初恋祭り』を読んでいました。短編集で、あと一つか二つで終わってしまう。この人の世界観は、すごいですね。何が出てくるかさっぱりわからない。予想がつきません。面白くてぐいぐい読んでしまいました。確か外国に住んでいらっしゃるのかな?そういうことも関係あるのでしょうか。日本語も解体されています。漢字の当て字などもスパスパと決まって、楽しい。この短編集が私は2冊目です。1冊目は『献灯使』という本で、こちらは表題作が中編で、他に4編の短編でした。そちらに比べて『穴あきエフの初恋祭り』はすごく軽やかな印象です。想像力が羽ばたいて、ふと目を離したらふわっと離陸している。楽しいです。

特に「鼻の虫」という短編が好きでした。人間の鼻毛の間で暮らしている虫が出てくるお話です。想像すると可愛い。どこからこんな発想がくるのか、不思議だけど、奇想天外という感じではなくて、手の中に収まる感じの不思議さがいいのです。

さて、本日ご来店いただいた皆様、ありがとうございました。今日も静かで満ち足りた時間が流れていたような気がします。昨日は1人でひとつぶを独占していましたが、やっぱりお客様がいるひとつぶの方がいいなと思いました。結局昨日は独占と言っても、仕込みしていただけだったですしね。誰かが、静かに豊かに時を過ごしている、そういうひとつぶがきっと、一番いいのだと思います。ありがとうございました。また明日も良い時間が持てますように。よろしくお願いします。それではまた明日。