喫茶と読書 ひとつぶ

20210413

今ひとつぶに来ています。ゆっくりしています。仕込みも今日はしません。明日の朝から。

さて、お客様からのご質問。本に関わる仕事の中で、なぜひとつぶというお店だったのか?

これはなんとお答えしていいか。本と関わる仕事をしようと思ったわけでは多分ないんです。だから、編集者とかライターとかっていう選択肢はなかった。年齢とタイミングもありますね。今私が30代で、都内に住んでいて、子供もいない、とかだったら、別のことをしていたかもしれません。今からそういう仕事に就くのは、正直無理ですしね。人脈も、なくなってしまっていますし。

本屋さんというのは、ちょっと思いました。これは今まで書いたことがあったかな。学生時代に渋谷のぽるとぱろうるという詩の専門書店でアルバイトをしていました。西武百貨店の地下です。小学校、中学校の時に日曜日に代官山を通って渋谷に行くと、必ず訪れていた場所でした。お小遣いがそんなになかったので、買えませんでしたけど。大学でまた東京にきた時に、アルバイトを募集しているのを見て、応募しました。時給は安かったけれど、ぱろうるで得た本の知識は、かけがえのないものだったし、私のとても深いところにある体験です。そこで出会った人との交流も素晴らしいものでした。

もう何十年も前のことなので、今は少し変わっているかもしれませんが、取次というものの存在をぱろうるで働いている時に初めて知りました。私にとって、本づくり、流通の流れのヒエラルキーの一番上にあるのは作家、そして出版社だったのですが、どうやら流通のところになると、それは違うらしい。そしてそれは強大な力で、ある意味出版社よりも本の世界に影響を及ぼしている、ということもうすうす知りました。書店はその中で、大変な思いをしている、ということも知りました。ぱろうるは特殊は本屋でしたから、配本はありませんでした。そこまでにするにはすごく苦労したということも聞きました。そんな古い知識もあって、書店を立ち上げる、というのは現実的には難しいのではないかと思いました。

元々、お休みの日のおばあちゃんの家。というのがイメージにありました。気兼ねなく、好きなだけ本を読める場所を作りたかったのです。都内にブックカフェがあるのはなんとなく知っていました。また、蔦屋の存在も知っていました。柏の蔦屋も、私がそんなことを思い始めた頃にできたような気がします。その中でもすごく魅力的だったのは箱根本箱でした。実際に一昨年だったか、娘と行きましたが、楽園でした。本に囲まれて、本を思う存分読んでいい。小さい時からの憧れが実現したと思いました。会社を辞めた時に、もう人の下で働くのは嫌だなと思って、心のどこかですくすく育っていたのがひとつぶだったのだと思います。誰に聞いても反対されたし、心配されました。でも始めてしまった。工事が始まってから、自分の無謀さに慌てました。開店してから怖さに怯えました。そして今に至っています。始まったばかりですが、毎日毎日心配したり感謝したり、迷うこともたくさんあります。

こんなんでお答えになっているでしょうか?

今日は雨の日の珈琲さんとTrivalCacaoさんに行って、コーヒー豆とチョコレートを仕入れて、元気ももらってきました。また明日から私の一週間が始まります。生き延びよう!そして、週末はお休みをします。イレギュラーになりますが、よろしくお願いします。それではまた明日。