喫茶と読書 ひとつぶ

20240525

昨日に引き続き、今日も静かな1日でした。やっぱり1ヶ月に数回、こんな日がありますね。天気とかとは別に。まあ仕方ないです!明日頑張ろう!

そんな日は、私は本を読みますよ。昨日から読み始めて、本日読了しました!『アノスミア 私が嗅覚を失ってから取り戻すまでの物語』という本です。アノスミアとは嗅覚脱失状態のことです。つまり、臭いを感じないということです。シェフ志望だった著者もりーは、ある日交通事故にあって嗅覚を失ってしまいます。そこからその感覚を取り戻していく物語です。

料理で身を立てていこうとする人にとって、嗅覚を失うとは、命を失うに等しいことです。この症状にある人に、できることはありません。運が良ければ感覚は戻ってくるかもしれないし、悪ければ戻らない。戻ってきたとしても、以前と同じとは限りません。

モリーは幸い、嗅覚を取り戻すことができました。そこに至るまで、彼女は嗅覚というものを通して、人間の感覚と心理の関係性とか、嗅覚によって失うものは香りだけではないことなどを自らの経験を通して、学んでいきます。

その過程ももちろん大変興味深いものなのですが、この作品の一番すごいところは、その香りの描写なのではないかと思います。こんなに世の中には香り、匂いが溢れているのだ、ということを教えてくれます。私は普通に嗅覚がありますが、こんなにたくさんの香りを感じて生きていないと思います。一度失ったからこそ、そしてそれに対して一生懸命学んだからこその香りの描写が素晴らしいです。料理もみんなおいしそうで、シリアスな題材なのに、楽しい作品でした。(モリー・バーンバウム著/ニキリンコ訳/2013年/勁草書房)

売り上げはダメだったけれど、面白い本を読めたので良い日でした!明日もよろしくお願いします。ではおやすみなさい。